リハビリテーション課理念
理学療法・作業療法・言語聴覚療法を必要としている
すべての患者さまに全人的医療を提供すること
業務概要
医師の指示のもと、国家資格である理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるリハビリテーション医療を提供しています。
実施手順
各科医師からのオーダー
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担当理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の決定
診療録・画像所見・ミーティング等での情報収集
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評価によるリスク・解決すべき問題点の把握
複数の所見確認による症状・病態の原因追究
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治療的運動療法、日常生活動作練習の実施
言語療法・摂食嚥下療法 他職種との連携
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医師の判断による理学療法・作業療法の終了
個別リハビリテーション実施の様子
外来での理学療法、作業療法、言語療法は全て医師の指示のもとで行い、完全予約制となっています。
症状・病態に応じた高度専門的なリハビリテーションの実施
疾患や外傷後のリハビリテーションを担当していますが、疾患や外傷そのものを治すわけではなく、「疾患や外傷を有する患者さま」を対象としています。疾患別の一般的なプログラムを実施するだけでは患者さま個々の問題を解決できません。また、同じ診断名であっても症状の程度や機能低下の部位などが異なるため、極めて個別性の高い治療が要求されます。
そのため、情報収集と所見確認により機能低下・症状の原因を追究して根拠のある治療を実施すること、患者さまの生活背景や退院先に合わせた治療を展開することに力を入れています。
実施計画に基づくリハビリテーションの実施
評価結果をもとに実施計画書を作成し、個々の問題点に応じた治療プログラムを実施しています。十分な治療時間を確保するために、外来通院患者さまでは予約制としています。また、その日のスケジュールに応じて入院患者さまの実施時間を設定しています。
安全管理された早期リハビリテーションの実施
疾患や外傷の治療に伴う安静臥床により、筋力低下や関節拘縮(硬くなって動かせなくなる)、起立性低血圧(起きると血圧が下がり活動できない)、認知症の進行などの廃用症候群が起こり、早期の社会復帰を妨げます。疾患や外傷そのものの治療期間よりも長くかかることもあります。当院ではこれらを予防し、早期の機能回復、早期の社会復帰を実現するためにできる限り早期にリハビリテーションを開始しています。
しかし、早期の運動、動作は、それだけ危険を伴います。感染、貧血、糖尿病、肝臓・腎臓機能の低下、呼吸不全、疼痛、再骨折・再断裂・脱臼など、多くのことを管理しながら進める必要があります。例えば、手術侵襲・炎症・食事量の低下等で低栄養状態となり、体力を消耗しやすくなっている場合は、運動負荷量を調整する必要があります。
当院では、疾患・外傷の特性、手術内容・手術中所見、検査データ、バイタルサインなどを確認することで「してはいけないこと」を明確にして実施しています。整形外科の手術後では手術の翌日から開始しています。必要に応じて手術前から情報収集や評価を行い、手術後の治療計画に生かしています。
自己管理方法・自己治療技術指導の強化
治療時間だけでなく、その他の時間にも機能回復や動作能力の再獲得、再発予防のための方法を指導しています。例えば、肩関節周囲炎で関節を動かすことができない場合、どこの部位が痛みの原因になっているかを確認し、機能解剖学に基づき、その部位への負担を軽減して炎症を軽くするための動作方法を指導しています。また、骨粗鬆症性脊椎椎体骨折(いわゆる背骨の圧迫骨折)の再骨折予防、肩の関節鏡下腱板修復術後の再断裂予防等のパンフレットを作成し、姿勢や運動、日常生活動作の指導に力を入れています。
他職種との連携
医師や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー等との連携により日常生活動作の獲得、社会復帰を支援しています。整形外科病棟では、月〜金8:30より医師、看護師(病棟・外来・手術室)、薬剤師、理学療法士・作業療法士によるミーティングを行っています。
医師から新規入院患者さまや手術前後の患者さまの説明が行われ、その後に各職種からの問題提起や提案が行われます。患者さまが獲得した機能・能力を医師・看護師に伝え、日常生活の中で実践するための情報交換の場としています。整形外科回診に週1回同行し、同科のすべての入院患者さまに関する情報交換をしています。その他の病棟も、週1回以上はミーティングに参加し、医師、看護師と協議しながらリハビリテーション医療を実施しています。
また、2021年に院内で発足された がん緩和ケア、整形外科、心不全、誤嚥性肺炎、消化器、救急、在宅支援の各チーム活動にも参加し、質の高い医療の提供と退院支援のためのカンファレンスや院内発表等を行っています。
学術活動・研修への参加および最新の医療への取り組み
既存の評価・治療だけでなく、日々進化する医療を取り入れるよう学術活動・研修に参加しています。研修会後に他のスタッフに伝達し、チームとして質の向上を目指しています。
(機器紹介:運動器超音波エコー)
心臓や胎児の評価によく使われる超音波画像診断装置のうち、場所を選ばず、持ち運びがしやすいポケットタイプのものを2021年2月に購入しました。この機器の最大の特徴は、「動きによる変化」を視覚化できる点です。運動時に骨折部位が動いてしまっていないか、縫合した腱に負担がかかって再断裂の危険が生じていないかなどを確認することができ、安全で効果的な運動療法の実施に役立てています。
腱断裂術後の再断裂予防のために運動器超音波エコーでの動態評価を行いながら理学療法を実施している場面
学生指導を通じた人材育成
院外でご指導いただいている先生方が所属する理学療法士養成校より臨床実習生を受け入れています。実習生への指導を通じて、スタッフの知識向上、指導能力の向上を図っています。
※実習生を受け入れている養成校:5校(県内2校、県外3校)
スタッフ紹介
理学療法士11名・作業療法士3名・言語聴覚士1名が在籍しております。治療に専念できるように事務員1名、助手1名が所属しており、合計17名で運営しています。
主な所属学会・認定資格・関連団体役職
日本理学療法士協会会員
日本作業療法士協会会員
日本言語聴覚士協会会員
日本理学療法士協会 専門理学療法士(運動器理学療法)
日本理学療法士協会 認定理学療法士(循環)
日本理学療法士協会 協会指定管理者(上級)
心臓リハビリテーション指導士
心不全療養指導士
3学会合同呼吸療法認定士
三重県糖尿病療養指導士
介護福祉士
福祉住環境コーディネーター2級
整形外科リハビリテーション学会会員
整形外科リハビリテーション学会 認定指導員A・評議委員・三重南支部代表世話人
腰痛予防労働衛生教育インストラクター(医療・福祉)
日本肩関節学会準会員
日本整形外科超音波学会準会員
主な学術活動
- 著書(共著)
- 整形外科リハビリテーション学会(編):関節機能解剖学に基づく運動療法ナビゲーション(上肢・体幹編および下肢編)改訂第2版,
メジカルビュー社, 2014.
※当課スタッフが2冊で計29ページ執筆 - 中図健(編):下肢運動器疾患の診かた・考え方,医学書院,2016.
※当課スタッフが約40ページ執筆
- 整形外科リハビリテーション学会(編):関節機能解剖学に基づく運動療法ナビゲーション(上肢・体幹編および下肢編)改訂第2版,
- 学術活動
- 日本理学療法学術大会 2演題(2008・2010年)
- 整形外科リハビリテーション学会 学術集会 5演題(2006・2007・2008・2010・2014年)、シンポジスト(2010年)、シンポジウム座長(2015年)
※すべて同学会誌に掲載 - 第27回整形外科超音波学会 演題発表(2015年)
- 第31回東海北陸理学療法学術大会 演題発表(2015年)
- 第43回日本コミュニケーション障害学会学術講演会 演題発表(2017)
- 第12回日本静脈経腸栄養学会東海支部学術集会 演題発表(2018)
- 第15回日本医療マネジメント学会三重支部学術集会 演題発表(2022)
- 第20回三重県理学療法学会 学会長(2009年)
- 第11回日本運動器理学療法学会学術大会 座長(2023)
- 論文掲載 浅指屈筋腱弓における正中神経障害が疑われた手指の運動時痛を呈した症例の理学療法経験.理学療法ジャーナル47(5):457-461,2013.
※他に、東海北陸理学療法学術大会・三重県理学療法学会 座長、整形外科理学療法・介護予防・介助技術等の院外講師・実技指導、市民公開講座 講師等 複数あり